石川(裕)委員 続きまして、地域防災計画について伺います。地域防災計画、災害対策基本法があり、そして防災基本計画、国の計画があり、県レベル、そして市町村レベルでそれぞれ防災計画を立てることは理解するのですが、では、実際に災害が発生した場合、例えば今回の報告資料でいうと、箱根の噴火、警戒レベルが2へ引き上げられましたというときについてです。気象庁が同年5月19日午前2時15分に引き上げたという報告がありますが、神奈川県には温泉地学研究所がありまして、ここで火山活動の調査をされていると思います。これは、例えば気象庁が午前2時15分にレベル2に上げるということですが、県は、どのようにかかわっているのでしょうか。
温泉地学研究所長 気象庁は、この噴火警戒レベルを上げ下げする、その役割を担っております。そのためのデータを気象庁は独自に、地震計や地殻変動の数自体保持しております。気象庁は、これを全国に展開しています。箱根山としては、それが1点、2点ぐらいで、非常に数が少なくなっています。一方、温泉地学研究所は、県の施設としてここに気象庁よりもはるかに密度の高い観測網を構築しております。これによって、気象庁よりきめ細かいデータを収集しております。そこで、こういった活動がありますと、温泉地学研究所は気象庁と連携し、折に触れメールやデータもリアルタイムで交換をしながら、状況を見守っていくことになっています。 今回の場合も、事前に3月から4月にかけまして、活動が若干活動的になってきたということについては、情報を共有しております。しかし、最終的にレベルを上げるという判断は、気象庁になるので、それは気象庁にお任せしています。温泉地学研究所は、気象庁がレベルを上げたことを踏まえて、緊急的な体制をとり、あるいは各種の情報を関係の方々に伝えるという役割を担っております。
石川(裕)委員 今の御答弁で、温泉地学研究所のデータが気象庁にも連携をされていて、その判断をするのは気象庁ということですが、箱根は今回レベル2に引き上げる前に、例えば温泉地学研究所としてレベル2に上がる可能性があることを予知できるのでしょうか。
温泉地学研究所長 可能性はあり得ます。ただし、これはあくまでも気象庁が判断することなので、温泉地学研究所が何かを言うということはありません。なお、補足ですが、温泉地学研究所は気象庁と協定を結んでおりまして、いわゆる火山対策調整官という、気象庁から出向している方が常に1名おりまして、その者が常に気象庁と連絡をとっています。
石川(裕)委員 そういう中で、神奈川県で温泉地学研究所という研究機関を持っているわけですから、例えば気象庁に進言はすることもあるのでしょうが、気象庁の判断ということは理解しました。ただ、地域にお住まいの方が安心して生活ができるように、温泉地学研究所としても情報発信をしていただきたいと思いますが、どのようにお考えですか。
温泉地学研究所長 おっしゃるとおりだと思います。実際、4月の上旬に、微妙ではありましたが、活動が活発化したことを捉えて、まず災害対策の所管へ報告し、気象庁にもその旨を伝えました。早く発表してしまうと、それが間違っている場合も当然出てきますから、慌てて発表するのは不適切だと思っております。まず内部で情報を共有し、噴火警戒レベルを上げる2日ほど前に、ずっと続いているということで、これは皆さんに公表したほうがいいと判断し、ホームページを書きかえると同時に、もっと幅広く、箱根町や関係の方々に公表しました。そのわずか2日後、急激に地震活動が上がってきたので、気象庁が噴火警戒レベルを上げたという順序になっており、事前から少しずつ情報は出していました。もちろん、それが引き上げられた後も、今度はどういうことが起こったのだという説明を皆さんにしないといけないので、研究成果を皆さんに発信しております。
石川(裕)委員 地震について伺います。温泉地学研究所では、国から地震の研究を依頼されていて、伊豆衝突帯テクトニクス調査研究、地震波速度構造調査研究事業を受けられていますが、どのような経緯なのか伺います。
温泉地学研究所長 まず、この経緯ですが、今から30年ほど前になると思いますが、いわゆる県西部地震といって、県西部に大きな地震が起こるかもしれないことが騒がれました。温泉地学研究所としても、県西部地域の研究をしなければいけないことになったのですが、それに当たっては研究資金が必要ということで、外部資金を何とか獲得したい、あるいは人材育成もしたいということで、課題が上がりました。そのころ文部科学省で、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトが2007年度から始まることを聞きましたので、東京大学地震研究所と協議し、仲間に入れてもらったという経緯がありまして、それ以来ずっとそこに入っています。 そこで何をやっているかということですが、このプロジェクト自体は防災科学技術研究所が指導してやっておりまして、引き続き、首都圏を中心とした地震に対するレジリエンス総合力向上プロジェクトの中で、首都圏の機能維持を図るために詳細に災害リスクを評価するとともに発災に備えた対策をするといった非常に大きなプロジェクトを持っておりますが、これは理学の分野だけでなく、工学、社会学の研究者も入っております。その一部として、首都圏における過去、未来の地震像の解明というサブタイトルに東京大学地震研究所と一緒に取り組んでいます。それが今言いました伊豆衝突帯テクトニクス調査研究で、この中で県西部の予想される地震像を解明するために、詳細な3次元的な構造を推定しようということで進めております。
石川(裕)委員 この研究で、例えばもうすぐ地震が来るという予知につながるのでしょうか。
温泉地学研究所長 それを期待したいところですが、やはり最近の地震学の現状では、地震の予知を正確に行うことはとても難しく、それを目標として研究することは非常に困難が伴うので、むしろその基礎にある、地震発生度がどういう状態になっているか、そこで発生する地震がどういう地震なのかということを詳細に明らかにすることが重要であり、そちらのほうを一生懸命やっています。
石川(裕)委員 最後の質問になりますが、誘発地震等緊急対策事業費も温地研では持たれています。地震活動の急激な活発化が観測されている箱根火山の観測網を整備し、地震防災対策の推進を図ることが目的であります。今、観測網が100%あって、この整備は更新のための整備なのか、それとも観測網を広げていかなければいけない段階なのでしょうか。そして、防災対策の推進を図る。この防災対策の推進は、具体的にどのようなことなのか最後に伺いたいと思います。
温泉地学研究所長 最初に言っておられました誘発地震等緊急対策事業費ですが、これは実は2011年の東北地方太平洋沖地震がありましたときに、あの地震に伴って箱根の下でも地震が起きるのではないかと大変懸念されました。そういった誘発地震に対応するために、当時は箱根地域では気象庁も地震計が一つしかなかったこともあり、4点ほど地震の観測点をふやしていただいたという事業です。それは引き続き実施しております。そういったものを含め、地震等の観測体制ですが、これはこの事業だけでなくて、もう30年ほど前ぐらいからいろいろな事業を使いまして、観測体制を整えています。その中には地震計、傾斜計、光波測量、GPS、地下水位、重力測定などがあります。 現状ですが、温泉地学研究所は、研究員が10余名おります。ただ、それでもやるべきことはたくさんありまして、なかなか手が回らない状況ではありますが、現状では、今の観測網をこれからどんどんふやしていくことは難しいことであろうと考えております。それで、中期的には現在の観測網を維持しながら、なるべく老朽化したものを更新しつつ観測を継続するが、長期的には、当然、地震の研究が進み、新しい技術が入ってきますから、そういうものを捉えるところで、新しい観測機器を入れるといったことも考えなければいけないと思っています。そして、取得されたデータを使い、申し上げているように、火山については箱根の噴火のメカニズムや、あるいは地震の発生メカニズムを明らかにして、それを防災に生かしていくことを心がけております。