石川(裕)委員 きょうは、津久井やまゆり園の意思決定支援について伺います。津久井やまゆり園の再生に向けて、津久井やまゆり園利用者の意思決定支援に丁寧に取り組んでいただいていることは評価しています。しかし、施設入所者だけを対象とした津久井やまゆり園の再生でよいのでしょうか。これまで津久井やまゆり園の短期入所等を利用していた方々も、事件によって傷ついている。そして、何もわからないまま、日常生活が大きく変化してしまい、大変御苦労されていることも伺っています。施設入所者だけではなく、これまでやまゆり園を利用してきた方々を含めて、津久井やまゆり園の再生を考えていかなければいけないと思いますので、この点について質問していきます。特に、短期入所を利用していた方々など、入所者以外の意思決定支援や、サービスの利用などにもついて取り組む必要があると思いますので、このことについて、まず伺います。主要施策説明書80ページの津久井やまゆり園の再生と共生社会の実現に向けた取組に関連して伺います。津久井やまゆり園利用者の意思決定の支援体制の整備を行う事業として、津久井やまゆり園意思決定支援推進事業がありますが、この事業の平成30年度の実施状況を確認します。
障害サービス課長 津久井やまゆり園利用者の意思決定支援では、利用者一人一人に、相談支援専門員や施設の職員、サービスの利用を支給決定する市町村の職員、さらに県の職員が加わった、意思決定支援チームを設置しています。津久井やまゆり園意思決定支援推進事業費ですが、この事業はこのチームをサポートし、円滑に意思決定支援を進めるための取り組みであり、具体的に大きく四つの取り組みで構成されています。一つ目が、意思決定支援チームに責任者を配置することです。平成30年度は16の法人、19の事業所にこの業務を委託して、それぞれ相談支援専門員が意思決定支援チームの運営、管理を行っています。また、2点目として、この意思決定支援チームに専門のアドバイザーを派遣する事業です。さらに、3点目として、意思決定支援に係る関係機関の職員に対する研修会の開催を行っています。この研修会は、平成30年度に5回ほど開催していて、延べ304名ほどの参加者がありました。さらに意思決定支援の進捗管理や利用者、御家族に意思決定支援をわかりやすく伝えるなど、意思決定支援を側面からサポートする専門の職員の配置なども行っています。こうした四つの取り組みで構成されています。こうした取り組みの結果、平成30年度は、意思決定支援の対象者123名いらっしゃいますが、この123名全ての利用者の意思決定支援チームを立ち上げ、延べ242回、意思決定支援チーム会議を開催し、必要に応じ、御家族にも加わっていただきながら、利用者本人の意思決定の取り組みを進めているところです。
石川(裕)委員 今、事業の内容は伺いましたが、その中で、意思決定支援専門アドバイザー派遣という予算が組まれています。これには、1,168万円の予算が組まれているのですが、この実績と、なぜその実績になったのかを伺います。
障害サービス課長 このアドバイザーの派遣は、御指摘のとおり1,168万円を当初予算で組ませていただきました。このアドバイザーの派遣の人数ベースで言いますと、365人分派遣できる規模で当初想定しました。しかし、この意思決定支援アドバイザーを派遣する前に、先ほど申し上げた関係者が集まったチームでより丁寧に進めなければいけないという、全国初の取り組みでもありますので、そういった実情も発生し、アドバイザーを派遣するまでに至らなかったこともありました。そのために、2月の補正予算で減額させていただき、結果的に先ほど365人分と申し上げましたが、結果的に派遣したのは65人分です。額にして208万円分という実績になっています。
石川(裕)委員 平成30年度の実績を踏まえて、平成31年度はどのような状況になっていますか。
障害サービス課長 この事業は総額としてことしも4,472万6,000円を組ませていただいて、御指摘のアドバイザーの派遣については、このうち1,000万円を組ませていただきます。対象の人数としては312人分に該当します。現在、もう10月も終わろうとしていますが、この時点で、派遣実績は61人分で、額にして195万6,000円という実績になっています。
石川(裕)委員 実施率と言いますか、達成率と言いますか、現状は2割程度と理解しますが、この事業による津久井やまゆり園利用者の意思決定支援の段階的な進捗状況は、今、御答弁ありましたが、まだまだ道半ばだという認識です。この意思決定支援を進めていく上での課題は何なのですか。
障害サービス課長 障害者御本人がどのような暮らしを望むのかという意思を、みずから形成し、それを表に出していくためには、一般的に実際にさまざまな社会生活上の体験をすることが必要と言われていますが、津久井やまゆり園の利用者の多くは入所施設での暮らしが長く、そうした経験が乏しい場合が多いという実情もあります。このため、意思決定支援を進める上では、まずいろいろなサービスや社会体験を行う、見学をする、そうしたことを重ねていくことが大事だと考えています。 そうした中、課題の一つ目としては、これまでの取り組みの中で、利用者からいろいろな体験をしてみたい、また地域生活に挑戦してみたいという声が多く聞かれるようになってきていますが、なかなか新たに地域で受け入れてくれる事業所も限られているという実情も見えてきました。この課題を解決するため、県の担当者が各地域で開催される協議会や打ち合わせの場に出向き、直接、事業所や関係者の方々にお願いをする機会を設けるようにしています。二つ目ですが、重度の知的障害や強度行動障害があるなど、民間施設では対応がなかなか難しい利用者が多いことから、言葉や態度だけでは本人の意思を酌み取ることが大変難しいという課題があります。この課題を解決するため、利用者の暮らしの様子やそのときの表情を、現場の職員が毎日丁寧に観察し、気がついたことをしっかり記録することを繰り返すことで、本人の意思に少しでも近づくことに取り組んでいます。
石川(裕)委員 今、長期の入所者の話は伺いましたが、事件前の津久井やまゆり園では長期の入所者だけではなくて、短期の入所者も利用していた施設でした。事件後、受入態勢上の都合から、短期入所は中止とされていました。そして、昨年再開したと承知していますが、もともと利用されていた方も含め、短期入所を希望する方々にはどのように周知をされているのか伺います。
障害サービス課長 事件を受けて、どうしても短期入所を一度やめなければならないという実情がありました。その後、事件から2年が経過した平成30年9月末に、10月から津久井やまゆり園芹が谷園舎で短期入所を再開することを決め、再開をお知らせする文書を事件前から短期入所を利用された方々には送付し、周知を行いました。また、事件前の短期入所は、あらかじめ短期入所のためのベッドが確保されている併設型の短期入所と言って、専用のベッドが確保されている施設でしたが、芹が谷園舎で短期入所を再開した後は、仮移転の園舎を使用している実情から専用のベッドを確保できず、空きベッドの活用にとどまっています。このため、もともと利用されている方以外の短期入所を希望される方については、現状、御案内をすることができていないという実情があります。
石川(裕)委員 短期入所者の全体の受け入れは大体どのような状況なのでしょうか。
障害サービス課長 事件前、短期入所を積極的に多く受け入れてきたころに比べたら、数が少なくなっていて、具体的な数字で申し上げますと、平成30年10月に短期入所を再開し、3月、年度末までの受入実績は延べ79人でした。また、令和元年度、ことしの受入実績は8月末までですが、4月から8月末までで160人となっています。事件前の水準では年間延べ3,500人ほどの短期入所の利用実績があります。この数字にはまだまだ達していませんが、県立施設として、可能な限り利用ニーズに応えることができるよう、取り組んでいきたいと考えています。
石川(裕)委員 入所者と同様、事件前に短期入所を利用していた方々など、地域で暮らす方にも意思決定支援は必要と考えますが、県としての考えを伺います。
障害サービス課長 意思決定支援により、障害者一人一人が本人の意思が尊重された生活を送ることができるよう支援をすることは、津久井やまゆり園の入所者に限らず大変重要と考えています。今回取り組んでいる意思決定支援は、平成29年3月に厚生労働省から示されたガイドラインに基づく全国初の取り組みです。津久井やまゆり園の再生に当たり、本人中心の支援の徹底、さらに本人の意思が反映された居住の場の選択を担保するため、他の自治体に先駆け取り組むこととしたところです。今年度は、国の事業の障害者総合福祉推進事業と言いますが、こういった国の事業も活用して、その成果や課題を取りまとめ、今後、障害者支援に携わる地域の方々に普及し、津久井やまゆり園利用者以外においても、意思決定支援の取り組みが広がるように取り組んでいきたいと考えています。
石川(裕)委員 事件前に、津久井やまゆり園の短期入所を利用されている方が困っているという話も伺っています。現在、在宅で生活している方のサービス利用については、どのように支えているのか伺います。
障害サービス課長 先ほど御答弁させていただきましたように、事件によって、津久井やまゆり園の短期入所は一時的に受け入れを中止せざるを得ない状況になっています。このため、事件直後の平成28年8月末に、かながわ共同会の法人は相模原市の施設団体に短期入所の受け入れの協力を要請して、相模原市内の事業所から多くの協力をいただきました。また、県も市町村の障害福祉の所管課に対して、短期入所の利用について協力の依頼を行っています。 昨年、芹が谷園舎で短期入所を再開することができましたが、これまで利用してきた相模原市内の皆さんには大変な御不便をおかけしており、相模原市内を初めとする多くの事業所の協力をいただくことで、何とか必要なサービスを利用していただいていると承知しています。そういう実情も踏まえ、今年度、着工を予定している相模原市の千木良地域の新しい施設においては、スピード感を持って整備に取り組み、安心して、千木良地域の施設で短期入所を利用していただくことができるよう、取り組んでいきます。
石川(裕)委員 要望を申し上げます。津久井やまゆり園事件は入所していた方々だけではなく、短期入所として利用していた方々にも大きな影響を及ぼしています。事件発生後から、短期入所者への説明がないまま、1年近くが経過し、常任委員会等で取り上げさせていただいた結果、県有施設として再生に向けた報告を速やかに行っていただきました。事件発生後の状況が見えない中での、短期入所利用者や、支える御家族にとっての不安やストレスはかなりのものであったと思います。現在、短期入所を利用しながら、在宅等での生活を送っている方々も津久井やまゆり園の再生を心待ちにしていると思います。このような方々に対してもきめ細やかな対応をお願いしたいと思います。