石川(裕)委員 かながわ県民・民主フォーラム神奈川県議会議員団を代表いたしまして、平成30年度神奈川県一般会計歳入歳出決算及び同年度神奈川県特別会計歳入歳出決算並びに平成30年度神奈川県公営企業決算の認定に当たり、賛成の立場から意見と要望を述べさせていただきます。
本県財政は、地方消費税の税率引き上げの影響による増収要因があるものの世界経済の先行きの不透明感から企業収益の回復が見込めず、税交付金等を含めた実質ベースでは減収が見込まれているところです。歳出は、急速な高齢化や、今後の幼児教育・保育の無償化などにより、介護・医療・児童関係費の義務的経費が増額となることから、令和2年度は、現段階でおおむね700億円の財源不足が見込まれています。このように、本県財政は、実質的に当該年度の歳入で歳出を賄えない危機的な状況で、さらに近年は、前年度の税収増などの臨時的な財源を活用して予算編成が行われて財源不足を補っており、今年度はこの活用が見込めないことから、歳入全体としては大幅な減額となる見通しです。また、歳出総額に占める義務的経費の割合が高い硬直的な財政構造となっており、政策的経費の確保が困難な状況でもあります。今後は、さらなる歳入確保を図ることはもとより、一層の事業の選択と集中を進めるとともに、最小の経費で最大の行政サービスを提供する筋肉質な県行政にしていかなければなりません。そうした視点から、我が会派として、この決算特別委員会において質疑を行ってまいりました。それでは、以下、一般会計及び特別会計の歳入歳出関係から具体的に意見と要望を述べさせていただきます。
初めに、外国人観光客誘致事業についてです。ラグビーワールドカップ、オリンピック・パラリンピック大会に向け、県は外国人観光客誘致事業に平成28年度から3年間で約5億円を支出し、さらに今年度は約2億5千万円もの予算を計上しています。県は、観光による経済活性化策として、目標としていた県内をめぐるインバウンドツアー1000本を用意できたと発表しました。しかし、ラグビーワールドカップが開催され盛り上がりを見せる中、県内外国人観光客の宿泊者数の伸びを感じることはできず、平日の宿泊者数が弱い、宿泊者が東京に流れた等の理由が報告されました。さらに、以前から指摘している目標のあり方についても、1000本ツアーなどを紹介するTokyo Day Tripのホームページ閲覧数が目標数値とされており、このホームページ閲覧数が事業の目的とする県経済活性化につながるのか甚だ疑問であります。繰り返しになりますが、今まで約5億円の県税を使い、さらに、今年度2億5,000万円もの予算を計上し、来年のオリンピック・パラリンピックの時期に同じ理由で誘致できなかったでは県民理解は得られません。厳しい県財政の中、県事業は費用対効果や県民還元が明確に求められます。質疑の中で提案させていただいた、県内市町村と連携し新規に発掘した観光地などでの訪問客数の把握を行うなど、県民に見える形で具体的検証を早急に行い、来年に向けた対策を打たれることを強く要望いたします。
次に、農業の担い手不足についてです。農業の担い手不足は長年言われ続け、かながわ農業活性化指針において、令和8年までの新規参入者数の目標数値が掲げられています。神奈川県の担い手不足の課題として、新規に農業に従事したい方がいるものの川崎、横浜で農業を希望する方たちが多く、県が希望する地域とのミスマッチなどが理由に挙げられました。ぜひ、神奈川の持つ魅力、神奈川県で農業を始める魅力、都心に近い神奈川県だからこそできる農業のメリットを積極的かつ明確に打ち出す事業を進め、PRしていただくことを要望します。そして、県全域で農業を始めたいという方をふやすことにより、新規参入に関する事業を終了させるといった前向きな事業の展開を図られることを重ねて要望いたします。
次に、津久井やまゆり園利用者の意思決定支援についてです。津久井やまゆり園事件は、入所していた方々だけではなく、短期入所として利用していた方々にも大きな影響を及ぼしています。事件発生後から、短期入所者への説明がないまま1年近くが経過し、常任委員会等で取り上げさせていただいた結果、県有施設として、再生に向けた報告を速やかに行っていただきました。事件発生後の状況が見えない中での短期入所利用者や、支える御家族にとっての不安やストレスはかなりのものであったと思います。現在、短期入所を利用しながら、在宅等での生活を送っている方々も、津久井やまゆり園の再生を心待ちにしていると思います。このような方々に対しても、きめ細やかな対応を行っていただくことを要望します。
次に、福祉タクシー車両導入補助についてです。ともに生きる社会を目指す本県にあって、高齢者や障害者を初めとする、誰もが快適に移動する手段を確保できる環境を整備することは、大変重要であると思います。その手段として、福祉タクシー車両導入促進に交付された補助金が、本来の目的を十分に果たし、高齢者や障害者が安心して円滑な移動が可能となり、社会参加が促進されるよう、関係機関とも連携して、取り組んでいただくことを要望します。
次に、高校生等への就学支援についてです。高校生等への就学支援については、近年、給付型の就学支援制度が充実してきていますが、一方で、貸与型の奨学金制度も、就学支援に今後も重要な役割を担っているので、継続して行かなければならないと考えます。後年度の奨学生のためには、貸し付けた奨学金は確実に返済してもらう必要があると考えていますので、奨学金制度が持続可能で安定したものとなるよう、引き続き返還向上に向け、しっかりと取り組んでいただくよう要望いたします。
次に、特別支援学校スクールバス運営費についてです。県立特別支援学校高等部知的障害教育部門の生徒について、スクールバスに乗車できていない生徒がいるとの話もあります。有効的なバスルートを検討し、少しでも多くの子供が乗車できるように尽力いただいていることは承知しています。一方、他地域では、通学で介護タクシー利用の際に補助を出す制度や、医療的ケア児の通学支援を介護タクシーで行うなどの政策を打ち出している府県もあります。また、県内で、下校時は放課後デイサービスなどを利用する方が多く、下校便の需要が下がっている点も伺っています。さまざまな障害を持つ生徒、保護者への通学支援においては、多角的な視点で検証、検討を進めていただくことを要望します。そして、スクールバス介助員について、平成16年度から、契約更新時にバス会社への民間委託に順次切りかえていることは理解し、民間活力を導入することは否定しませんしかし、仕様書を委託先に提示しているとのことですが、さまざまな障害を持つ生徒、保護者の皆さんが安心してスクールバスでの通学ができるよう点検調査を行うとともに、委託から15年が経過した中で委託前と比較し、導入当初の目的であったサービスの充実や費用面での検証を行い、今後の課題を精査されることを要望いたします。
続きまして、公営企業決算につきまして、意見と要望を述べさせていただきます。 公営企業会計の事業別の決算額の把握についてです。先ほど一般会計及び特別会計においても申し上げましたが、県で取り組んでいる各事業の予算に対して、それが結果としてどのように使われたかをあらわすのは決算額であり、事業を県民にわかりやすく伝えることが大切だと考えます。来年度以降は、事業別の決算額をぜひ明らかにした書類を作成していただくよう要望します。
以上、意見と要望を申し上げ、日程第1、認第1号 平成30年度神奈川県公営企業決算の認定について、日程第2、認第2号 平成30年度神奈川県一般会計歳入歳出決算及び同年度神奈川県特別会計歳入歳出決算の認定について、賛成することを申し上げて意見発表とさせていただきます。