石川】次に、観光施策の質向上と経済波及効果について伺います。

昨年5月に新型コロナの分類が5類に移行したことにより、県内を訪れる外国人観光客数はコロナ禍前の水準を超える勢いとなっており、県を代表する観光地である箱根町では2023年の年間観光客数が前年比12・4%増の1951万人となり、うち、宿泊客は前年比14・1%増の394万人、日帰り客は同11・9%増の1557万人と、「コロナ禍から平時への移行を実感している」と発表しています。同様に、鎌倉市では2023年に市内を訪れた観光客の延べ人数が前年比2・7%増の約1228万人となり、藤沢市は前年比15・3%増の約1960万人で過去最高を記録し、観光消費額も前年比39・3%増の1085億円で過去最高を更新したと発表しています。

このような状況の中、県では昨年より第5期神奈川県観光振興計画を進め、その目標として「観光振興による経済波及効果の拡大により地域が輝くこと」を目指しています。この計画では、2024年の入込み観光客の目標値は2億700万人、計画の最終年である2026年には2億1023万人を目指すとしています。また、観光消費単価は、日本人国内旅行の消費単価を今年の23,220円から2026年には24,160円に、訪日外国人の消費単価も今年の目標90,490円から2026年には11,830円向上させ102,320円とする計画となっています。

現在、円安や物価高騰もあり、結果、消費単価が計画目標に向かって良い方向に進んでいると考えます。しかし、この計画の最終的な目標は「観光振興による経済波及効果の拡大により地域が輝くこと」です。観光産業は旅行業や宿泊業を中心に、土産物店や飲食店、農林水産業や製造業、運輸業など多岐にわたる産業に影響を与える分野です。今年度は「行ってみたいかながわの魅力づくり」事業として約14億円の予算が計上されています。

一方で、これまでの目標観光客誘致により、県が期待する雇用創出や経済効果の具体的な数値という視点での検証がなされていません。また、この振興計画の目標が達成された場合、観光産業以外の産業や県民にどのような経済的な恩恵が及ぶのかも考慮する必要があります。さらに、今回の質問にあたり、2023年の県全体の観光データが集計中であることから、2022年の数値データを確認したところ、新型コロナの影響により対面調査ができなかった等の理由で、全国で神奈川県のみ欠測という状況でした。

そこで、知事に伺います。2023年の県内観光客数・観光消費単価の動向をどのように捉えているのか。また、その動向を踏まえ、今後、どのような取組みを進め、県内経済の活性化につなげていくのか所見を伺います。

知事】 次に、観光施策の質向上と経済波及効果についてです。
まず、令和5年の観光客数等の動向についてです。国の調査による令和5年の本県の延べ宿泊者数は、コロナ禍前の令和元年を既に超えており、観光客数や観光消費単価についても、同様に増加傾向にあると認識しています。
次に、県内経済の活性化につなげる取組についてです。観光振興により県内経済の活性化を図るには、この機を逃さず、国内外の旺盛な観光需要を取り込む必要があります。その際には、観光客が特定地域に集中することがないよう分散化を図った上で、県内の観光コンテンツの付加価値をさらに高め、県内全体での観光消費額を増加させていくことが重要です。そこで、県では、海外の都市に観光レップを置き、現地でのセールス活動を行い、富裕層を対象とした観光コンテンツの販売を積極的に進めます。さらに、海外の旅行会社を本県に招待して、高付加価値の観光コンテンツを体験していただくことで、新たな商品化を促進していきます。 また、観光客の滞在時間を延ばし、消費額の増加をもたらせるよう、今年度は、新たにAR技術を取り入れたデジタルラリーを実施するなど、DXを活用した県内周遊を促す取組も行います。こうしたことにより、観光消費額を増加させ、県内経済の活性化につなげてまいります。

石川】再質問させていただきます。県内経済の活性化について、さまざまご答弁をいただきましたが、観光振興計画の目標が達成された場合、観光産業以外の産業や県民、特に、オーバーツーリズム等でご迷惑をお掛けしている県民の皆さまなどに対して、「観光振興により経済波及効果がどのくらいあるのか」という点について、提示する必要があると考えますが所見を伺います。

知事】観光振興による経済波及効果の提示についてのお尋ねでありました。観光振興による効果を検証するに当たり、観光消費額と併せて、雇用などへの波及効果を提示することができれば、県の取組について多くの方の理解を深めることにつながると考えています。そこで、県では、現在の第5期神奈川県観光振興計画の効果を検証するため、観光振興による経済波及効果を示すことについて検討してまいります。

石川】要望を申し上げます。経済波及効果について検討していくとの答弁がありました。これまでも外国人観光客誘致のために多くの県税を使用してきましたが、その費用対効果や、せめて経済波及効果の拡大を目標に掲げているのであれば、県民に対してその拡大効果を金額で示す必要があると申し上げてきました。今回の答弁は一歩前進であると感じています。早急な検討を求めます。