石川】次に、 障がい者雇用の促進に向けた戦略的な取組みについて です。
今年3月、我が会派の県政調査で大分県別府市にある「社会福祉法人太陽の家」を訪問しました。太陽の家は1965年に設立され、様々な会社と共同出資し、障害者が働ける会社を複数設立し、多くの障害者が活躍する場を提供しています。「世に身心障害者はあっても仕事に障害はあり得ない」という設立時の理念のもと、現在も運営されています。この訪問を通じて、障がい者雇用の現状や課題について改めて深く考える機会となりました。
本県の現状を見てみると、「私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します」と掲げる「ともに生きるかながわ憲章」があります。この憲章の理念にも通じる、障がい者の県内での雇用について、県は積極的に進めていく必要があると考えます。
令和5年6月1日現在の民間企業における障がい者の雇用状況では、実雇用率は、全国が2.33%である中、県内の実雇用率は2.29%となっており、多くの県内中小企業ではまだまだ障害者雇用の認識が広がっていないとの指摘もなされています。一方で、県内に約200事業所がある将来の一般就労に向け訓練を行う「就労移行支援事業所」には令和4年度利用実績で3,417人の方がいらっしゃいます。同、令和4年度の県内ハローワークでの障がい者の有効求職者数は19,058人となっている中で、戦略的なマッチングの進め方や、企業へのアプローチの在り方を検討することが必要と考えます。
障がい者の雇用は、企業にとっても重要な社会的責任の一環であり、法定雇用率を達成するためには、企業の理解と協力が不可欠です。本県では、障害者雇用に理解のある企業に対するアプローチは既に確立され、具体的な取組みとして、障害者雇用に関する情報提供や企業向けのセミナーの開催、障害者の特性に応じた職場環境の整備支援、成功事例の共有などを行っています。しかし、まだまだ法定雇用率を達成する企業を増やすことができていない現状があります。
そこで知事に伺います。多くの企業で多様な働き方ができるよう促し、障害者雇用の理解を広げ、法定雇用率達成への道筋をしっかりと描くことが必要と考えます。そのためには、障がいのある方で就業を希望されている方の人数、障がい者の有効求職者数を元にした企業へのアプローチの在り方など、このようなデータを基に雇用促進に向けた戦略的な取組みを進める必要があると考えますが、知事の所見を伺います。
知事】次に、障がい者雇用の促進に向けた戦略的な取組みについてです。
県ではこれまで、法定雇用率未達成の約2,700社を対象に、国と連携して戸別訪問を行い、障害者雇用の理解と積極的な雇用を促してきました。その中には、障害者雇用の意義は理解しているものの、障害者と働いた経験やノウハウがないことから、雇用に消極的な企業もあります。そこで、こうした企業に対しては、障害者を短期的に雇用する体験事業を新たに実施し、企業と就労を希望する障害者のマッチングを行います。あわせて、雇用の選択肢を増やすため、通勤等が難しい障害者のテレワーク雇用の支援を行うほか、精神障害者を雇用した企業への補助金を週10時間以上20時間未満の短時間雇用に拡大します。
そうした中、障害者雇用を一層促進させていくためには、さらなる企業の理解と環境整備等が重要であり、そのための戦略的な取組が必要です。
そこで、これまでの企業訪問の結果を整理、分析するとともに、国や就労支援機関等と連携して、企業の求人状況、求職者の障害種別年齢構成など、データを検証しながら、企業への効果的なアプローチ方法や必要な支援策を検討していきます。こうした取組を通じて、障害当事者が多くの企業で多様な働き方ができるよう、数的にも、質的にも、異次元の障害者雇用を目指してまいります。