石川】次に、県内中小企業への支援策の現状と今後の取組みについて伺います。

東京商工リサーチ横浜支店によると、2023年度の神奈川県内で負債額が1000万円以上の企業倒産件数は、前年比22.6%増の527件となり、2019年度以来の500件台に達し、この数字は新型コロナ禍前の水準に戻ったとされています。また、5月に同支店が発表した、4月の負債額1000万円以上の県内倒産数は、前年同月比35.9%増の53件となり、「企業間の収益力や資金調達力の格差が拡大し、ふるいにかけられる局面」であり、6月には「中小企業に対する支援が資金繰りから事業再生に移行し、旧態依然の企業は支援の網からあふれやすい」とも指摘されています。

2023年度は特に、新型コロナ関連の倒産は123件、そのうち30件が飲食店となっています。そして、業種別でみると、飲食店を中心としたサービス業が165件で最も多く、次いで建設業が3.4%増の138件となっています。これらの倒産増加の一因として、新型コロナ禍で実施された実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済開始がピークを迎えることが挙げられ、今後も倒産数の増加が懸念されています。

また、「ゼロゼロ融資」の返済状況を見ると、全体の32,687件のうち、約90%の29,179件が完済または正常に返済中となっている一方で、返済猶予などの条件変更は1,448件(4.4%)、代位弁済が691件(2.1%)となっています。産業別では特に、運輸業・倉庫業では条件変更が5.7%、代位弁済が3.5%と高い割合であり、建設業でも代位弁済が2.4%と全産業の平均よりも高い数字となっています。さらに、今年度は残業規制の強化や労働力不足、物価高や光熱費の上昇など複合的なリスクが続いており、「体力のない企業の息切れ倒産など、倒産の増勢ピッチが強まる可能性が高い」との指摘もあります。

県は、不況業種に対する支援策として、建設業や運送業などでの労働力の確保やスキルアップ支援、業務の多様化や効率化を図るための技術革新への投資などを挙げていますが、このような状況下で、県としての中小企業を支援する必要性、重要性、スピード感は非常に高まっており、かつ、中小企業への支援策については柔軟な支援策の展開や、企業の持続的な成長を促すための取組みが求められていると考えます。

そこで知事に伺います。新型コロナが5類に移行し1年が経過した中で、倒産が増加している業界、例えば建設業や運送業などの不況業種に対する支援策の効果や成果をどのように評価しているのか。また、今後、そのような不況業種に対して具体的にどのような支援策を検討されているのか所見を伺います。

知事】次に、県内中小企業への支援策の現状と今後の取組みについてです。

建設業や運送業など、価格転嫁しにくい多重下請構造である業種は、人口減少や2024年問題による人手不足の深刻化とも相まって、厳しい状況にあると認識しています。県ではこれまで、取引先との共存共栄の取組や、適切な取引慣行の遵守などを企業の代表者が宣言するパートナーシップ構築宣言の普及に取り組み、価格転嫁の促進を図ってきました。また、人手不足や高齢化といった、建設業や運送業などに共通する課題に対応するため、DXの推進、生産性向上に向けた施設整備への補助、人材確保のためのマッチング支援などに取り組んできました。さらに、昨年度の県の制度融資においては、建設業と運送業の利用が全体の4割を占め、融資実績も700億円に上っており、建設業と運送業の資金繰りを一定程度支えてきたと考えています。
次に、今後の支援策についてですが、神奈川産業振興センターに設置した価格転嫁サポート窓口による専門相談や、融資の利用が困難な小規模企業に対する設備貸与制度といった、建設業や運送業などが活用できる支援策について広報を強化し、利用促進を図ります。また、適切な価格転嫁の促進に向け、改めて私が県内経済団体を訪問して、直接要請を行います。さらに、このような厳しい業種の状況は、本県に限ったことではなく、全国的な課題でもあるため、今後、原材料、エネルギーコストや労務費の価格転嫁、下請事業者への支援の強化について、全国知事会を通じて国へ要望してまいります。